くまの足跡

Travel Diary
Jan.15.2017

世界でいちばん冷めたサポーター①

Doha, Qatar ドーハに来たのにカタール人にはなかなか出会えない。なんだか不思議な国だ。とりあえずスタジアムへ行ってみた。

らくだ

世界中の人々に会える不思議の国

「世界一熱いサポーター」は、果たしてどこか――。
しばしば尋ねられるが、これだという答えを出せずにいる。アルゼンチンのボカとリーベルが双璧だと思うが、サーベルを振り回してピッチに乱入するトルコ人の暴れっぷりも大したものだ。遺灰をピッチに撒こうとするスコットランド、セルチックの執着も恐ろしい。世の中には、信じられないくらい熱い連中がたくさんいる。

反対にまったく尋ねられないが、「世界一冷めたサポーター」なら迷うことなく挙げられる。それは中東の国、カタールにいる。

2008年11月上旬、私はカタールにいた。
11月19日、この国の首都ドーハでワールドカップ最終予選、カタールと日本の大一番が行なわれる。試合より一足早く現地入りすることにしたのは、せっかくの機会、カタール・スターズリーグを観戦しようと考えたからだ。

アルアハリ・スタジアム

「ドーハの悲劇」の舞台となったアルアハリ・スタジアム

それはカタールでしか味わえない、貴重な体験だった。「サッカーは国を映し出す鏡」と言われるが、スターズリーグで目にしたものには、カタールの特殊なお国柄が映し出されていたからだ。

カタールは、外国人ばかりが暮らす不思議の国だ。
ホテルのメイドはフィリピン人で、タクシーに乗ればタンザニア人がハンドルを握っていた。新聞が並ぶキオスクにはイラン人がいて、体調を崩して病院に行くとチュニジア人医師が診察に出てきた。そういえばカタール・サッカー協会を案内してくれたスタッフは、英語が堪能なブラジル人だった。
この国でなら、一日で10カ国の人々に出会うのも珍しいことではない。

ペルシャ湾に突き出したカタールは秋田県とほぼ同じ面積で、220万ほどの人々が暮らしている。そのうち外国人は7割を超える。ほとんどが豊かな産油国に仕事を求めてやって来た、出稼ぎ労働者たちだ。

外国人ばかりのカタールでもっとも会いづらいのは、もしかするとカタール人かもしれない。裕福な彼らは、灼熱の街角を出歩いたりしないからだ。

カタール人を見たいと思ったら、巨大なショッピングモールに行くといい。駐車場にはこの地で大人気のトヨタ、ランドクルーザーが並び、冷房が効いたモールでは家族連れのカタール人が優雅にショッピングをたのしむ。
ランドクルーザーが人気なのは、郊外に広がる砂漠を爆走するためだ。お金があっても娯楽が少ないカタールでは、砂漠ドライブは気分転換に欠かせないのだ。

インド人学校の子どもたち

2011年アジアカップにはインド代表が出場。地元のインド人学校の子どもたちが大勢、応援に駆けつけた

さて、ドーハに着いた私は早速、スターズリーグを見に行くことにした。カードはアルガラファ対ウム・サラル。案内を買って出てくれたのは、ドーハで日本語を教えている知人と、その教え子であるアニメ好きのカタール人ムハンマドくんである。

かつて、アルゼンチン代表のバティストゥータやスペイン代表のグアルディオラといった大物が晩年を過ごしたスターズリーグも次第に小粒になり、いまは世界的な名手はいない。
ただアルガラファにはアラウージョ、ウム・サラルにはマグノ・アウべスと、ともにガンバ大阪でゴールを量産したブラジル人がプレーしていた。

もっとも試合のことは、よく憶えていない。
それは試合が退屈だったというよりも、スタンドに目を奪われていたからだ。なぜならそこには、カタールでしかお目にかかれない摩訶不思議な光景が広がっていたのだ――。(つづく)

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