壁画ライブラリー
恐ろしい夜道に輝く星6つ
Salvador, Brasil2014 ワールドカップの壁シリーズ、第3弾はブラジル東北地方のサルバドールからお届け!怖い話付きです。

奴隷貿易の港として栄えたサルバドールは、ブラジルを象徴するサンバ、さらにはアクロバティックな足技で有名な格闘技カポエイラの発祥の地。世界遺産に指定される、旧市街ペロウリーニョのエキゾチックな路地を探索すると……。

床屋さんの壁には、この街を代表する2大クラブ、バイーアとビトーリアのエンブレムが描かれていました。

HEXAとは「6つ目」という意味。もちろん、「6度目の世界制覇を狙うぞ」というメッセージだ。きょろきょろしながら路地を歩いていくと……。

生まれて間もない赤ちゃんを連れた、幸せなお母さんに出会いました。

こちらはお婆ちゃんとお孫さん。赤ちゃんたちはみんな、カナリア色の衣服に包まれていました。

こちらの姉妹は、おそろいのネイマールのシャツ。

ブラジル対メキシコ戦のキックオフが迫り、街頭テレビに地元の人々が集まってきた。

夜の路地を散策していたら、目の前にHEXAの壁が。こんな壁もあるのか、と感心しながら歩いていたら、恐ろしいことになってしまった。
治安の悪いサルバドールでは、観光客やメディア関係者が頻繁にスリや強盗に遭っていました。かくゆう私も、被害者のひとり。ひとりで夜の街に繰り出した帰り、襲われてしまったのです。気持ちよくビールを飲み、深夜1時過ぎまでふらふらしていたんですから弁解の余地もありません。
警官が見張っている世界遺産の安全地帯から、私の泊まった安宿は150メートルほど離れていました。この150メートルが怖いのです。ほろ酔い加減の私は突然、背後から羽交い絞めにされ、物陰に引きずり込まれました。わずか5秒くらいの出来事。呼吸ができず、意識が遠のいていくのがわかります。
しかし、この瀬戸際で私は奮起しました。背中にへばりついた強盗を、思いっきり壁にぶつけたのです。強烈に首を絞め上げていた腕がぽろっと外れ、私は這う這うの体で逃げていき、警官に助けを求めました。
「お願いですから、宿まで一緒についてきてくださいよ!」
警官は「ああ、またか」という表情を浮かべながらも、ついてきてくれました。
宿に帰ると、ちょうどいまから夜遊びに出ていこうとしていたドイツ人のグループが、「おい! どうしたんだ!」と慌てて私に尋ねてきました。そのとき初めて気づいたのですが、私の右手は血に染まっていたのです。
「どうしたんだ! 説明してくれ!」
大好きなビールどころではなくなってしまったドイツ人たちに、私は襲われた顛末を包み隠さず説明しました。
「そこの角を曲がったところが危ないんだよ。でも、ぼくは何も盗られなかった。3、4人襲い掛かってきたけど、まとめて叩きのめしてやったんだ」
何も盗られなかったというところを除けば、すべて嘘。でも、これくらい言ってやらないと悔しいじゃないですか。堅実なドイツ人たちは「今日はやめるか」と、大人しく部屋に帰っていきました。ドイツ人ともあろうものが情けない!
翌日、私は宿のちょっとした英雄になりました。